前回に続いて、ジープ島をベースにしてキミシマ環礁に挑んだ、
とある1日の「気分」を描いてみようと思う。
それも、よりハードチックに、ダイバーとしての感覚を前面に出して・・・。
何故それほどまでにキミシマにこだわるのか?
もちろん、ジープ島そのものも、掛け値なしに素晴らしい。
たぐいまれなる海(ハウスリーフ)、奇蹟のような天空の調べ、
ナチュラル・ゴージャスなくつろぎのひととき、、全てが特筆に値する。
ただ、もう20回以上行っている私にとっては、
ジープとは、その先の「遙か彼方」へ向かう為の、
「居心地のいいベースキャンプ」という見方がとっても強い。
そしてそれが、またそのままこの島の魅力なのだ。
例えば山で言えば、ヒマラヤに挑むベースキャンプ地の美しい町並み。
遥かに見上げる、雪を頂いた憧れの峰々。
そこはすでに日常を離れてはいるのだけど、非日常ではなく、
その中間に位置する心のオアシス。
更に、今日はここから挑むぞ!という心地いい緊張に包まれた空気感・・・。
そう!それはそっくりそのまま、このジープとキミシマの関係にも
当てはまるのではないかと思う。
そして、ダイビングという、遊びとしての「装置」の匂い。
それは、潮臭く、寡黙で、野性味に溢れ、限りなく不良臭くて、いい。
私はずっとその世捨て人的な、
「冒険の身体性と世界観」を、ダイブに感じてきたのだから・・・。
その日は朝から快晴。『今日はキミシマだ!』
それだけで、体の芯からエネルギーが沸々と沸き上がってくる。
この先の「遙か彼方」へ。
外洋を隔てた、あの幻のように横たわる環礁へ。いざ、挑まん!!
風は暖かく、肉体は既に戦闘マシーンになるべく、スイッチが入った。
滑るように舟が走り出す。
『サ・スー!』 (トラック語で、、さあ、出発!の意味)
外洋を越え、キミシマの海域に入った。
いつ来ても、ここのムードは、血湧き肉踊る♪
今回は、私が一番好きな、ベスト大物ポイント「ブルーチャネル」。
ここだよ!ここ!!
この青、この輝き、この神秘性・・・。
潮の流れを見る。しばし緊張が走る。
素早く器材をセットする。
海に入って、中の様子をチェック。 OKだ!
お~っ!これぞ、イントゥー・ザ・ブルー!!
光が底のただ1点に向け放射され、神秘の青へといざなう。
ド~ンとエントリー!
「・・・・・・・・・」この青に言葉はいらない。
いきなり、イソマグロが顔を出した♪
ウメイロモドキが通り過ぎ、 ハナムロが、矢のように流れていく。
先頭者が何かを見つけたようだ。
カマスの大群だ!
既に、「思考」というものはない。
あるのは、研ぎ澄まされていく感覚と、ギリギリの生存本能・・・。
何処からともなく、サメが姿を現した。
オグロメジロザメだ。
深いブルーの中で、それはとにかく美しい。
流れるようなシェイプ、無重力のような泳ぎ、
そして冷たい野生そのものの気配・・・。
カマスの群れの周りを旋回し、捕食のタイミングを伺っているようだった。
今度は、向こうの方に何かがいるようだ。
ギンガメアジの大群だった♪
よっしゃー、、こうでなきゃ、ブルーチャネルじゃない!
慎重に接近する。
比較的棚が浅くて、明るいムードがここの特徴。最高だ!!
視界を全て覆い尽くされた。
この迫力、この密度、この美しさ! これぞ、ブルー・ドリーム!!
この青は、一生脳裏に焼き付いてくれるだろう♪
いつまでも居られないのが残念・・・。 ギンガメ君とサヨナラだ。
丸々としたイソギンチャクとクマノミ。
海の中は、常に驚きの連続!
そして、アケボノハゼ。
徐々に深度を上げ、ハナゴイの群れの舞を堪能する。
英名で、フェアリー・バスレット。
フェアリー=妖精。いつまでも見ていたい。
夢の中にも出てきておくれ^^
いよいよ、フィニッシュに近づく。
ここは、浅場も独特の華やかなムードがある。
さあ、エギジットだ。
水中のこの青を目に焼き付けて・・・。
ボート上からも、いつまでも眺めていたい。
この青は、巡礼者の為の青。
この日は帰りも天候に恵まれ、快適な遠征となった。
ジープ島が見えてくる。
まだ頭の中は、青く染まったままだ。
網膜までもが・・・。
陽射しはまだまだ強いけれど、ゆっくりと斜光に変わり、
落ち着きとくつろぎの時間を迎える。
珊瑚のカケラが微笑みかける。
ハードなダイブの後はこれ!
ハイランドモルトの雄・グレンオード。私が今一番愛飲しているモルト。
脳裏に焼きついた青と、天空の青が溶け合う。
それが夕暮の朱とモルトの琥珀と混ざり合い、
この世のものとも思えない、絶妙なカクテルとなる♪
少しずつ、少しずつ、辺りは闇になっていく。
でも、とても優しい、柔らかな闇だ。
当然BGMは、クラプトンのピルグリムからの1曲。
PILGRIM=巡礼者
まさに今日は、巡礼の一日と言えるのかもしれない^^
最後に、開高健氏の、とある一節から引用してみよう。
・・・こういう瞬間、
澄明であたたかい、キラキラ輝く潮が、澎湃(ほうはい)とさしてきて、
全身にみなぎり、自我が肩からのびのびと揮発していく。
ハイネは、遊んでいるときだけ男は彼自身になれると、いった。
ニーチェは、男が熱中できるのは遊びと危機の二つだけだと、いった。
——————————–【「オーバ!」アマゾン篇より】
続く。